西興部村猟区管理協会

第6回(2006年1月)

ロゴ
ツキノワグマとヒグマは豊かな日本の自然を象徴する野生動物です。一方、彼らは農林業被害やときには人
身被害を引き起こす厄介物でもあります。そんな彼らと我々人間がうまくつきあっていくためには、何が必要な
のでしょうか?
彼らと向き合って、その方法を模索している2人の講師をお迎えし、クマと人間の課題について考えました。
当日は村内外より16名の参加がありました。

日時:平成18年1月9日(月)17:00-19:00
会場:西興部村公民館視聴覚室
参加費:無料
「ベアドッグ奮闘記~長野県軽井沢におけるツキノワグマ管理~」
 NPO法人ピッキオ/ツキノワグマ保護管理部 田中 純平 氏
「ヒグマとハンター~道南地域の現状と課題~」
 NPO法人EnVision環境保全事務所 早稲田 宏一 氏
主催:NPO法人西興部村猟区管理協会 後援:西興部村

西興部村猟区公開講座「地域がクマとつきあうために」

「ヒグマとハンター~道南地域の現状と課題~」

早稲田宏一氏

NPO法人EnVision環境保全事務所 早稲田 宏一 氏

 早稲田氏からは、まずヒグマの生息状況や農業被害、捕獲数についての全般的な紹介があったのち、捕獲数全体の2割が集中する道南地域の状況について説明がありました。
 道南では山がちな地形からか、ハンターや山菜取り、釣り人の人身事故が比較的多く、また農業被害が多様(コーン・ビート・スイカ・果樹・米・ゴミなど)なのだそうです。このような被害発生時には、役場などに通報が寄せられ、地元ハンターが有害駆除等で出動依頼を受け、現地調査・巡回が行われ、必要があればワナの設置など捕獲が試みられますが、このような専門技術と危険を伴う活動を担うハンターの高齢化と人口減少が進んでいるそうです。
 これを受けて、道南地域では人材育成や被害防除を目的に春期ヒグマ捕獲事業(約10年ぶり)や夏期ヒグマ対策事業が実施されています。前者では、オス捕獲の優先・地域ごとの捕獲枠の設定などが規定されていますが、長期間のブランクによる技術の喪失や地形の変化などの問題があることが指摘されました。また、後者では専門員の配置による農地周辺の刈り払いや電気柵設置による被害予防活動や出没時被害発生時の現場対応・巡視・ワナ設置などが試験的に実施されたそうです。

 最後に、地域に根ざした人材育成の必要性が強調されました。

「ベアドッグ奮闘記~長野県軽井沢におけるツキノワグマ管理~」

田中 純平 氏

NPO法人ピッキオ/ツキノワグマ保護管理部 田中 純平 氏

 田中氏からは、まず軽井沢のクマ問題についての紹介があったのち、最近導入されたクマ対策犬の活動報告がありました。
 年間800万人の観光客が訪れる軽井沢高原は別荘地としても有名ですが、それらはツキノワグマの生息地である保護区の山林に散在しているそうです。クマは別荘地のゴミや保存食料などを求め、軒下や屋根の上にまで出没するようになりました。数年前のピーク時には、目撃情報は年間100件程度、被害件数は200件程度にも上ったそうです。
 田中氏の所属するピッキオは町と連携してクマ専門チームを設置し、誘引物撤去や問題グマの捕獲・学習放獣・追い払い・被害防止のための普及啓発などの活動を展開しています。この中で最近注目を集めているのが、クマ対策犬の導入です。これはカレリア犬という北欧原産の熊猟犬で、アメリカで熊対策権として訓練されたものです。かれらは、現地対応でのクマの痕跡調査・巡視・追い払いなどに活躍しているそうです。このような活動の結果、最近では目撃・被害件数がピーク時の1/3程度まで減少したそうです。

 このような地域に密着した地道な活動が、クマとつきあっていくためには重要であることが訴えられました。